水素を駆動源とした燃料電池式電動ショベル試作機での稼働評価
~カーボンニュートラルに向けた建設機械の開発~

2023年9月27日
コベルコ建機株式会社

 コベルコ建機株式会社(本社:東京都品川区、社長:山本 明)は、カーボンニュートラルを目指す取り組みの一環として、生産プロセスにおけるCO2削減※1とともに、製品面においては、お客様のカーボンニュートラル実現に貢献する建設機械を開発し、順次提供していきます。

 このたび、燃料電池式電動ショベルの試作機を開発し、水素を駆動源とした稼働評価を開始しましたのでお知らせします。

 当社は「低燃費のコベルコ」を掲げ、世界トップクラスの燃費性能や世界初のハイブリッドショベル、有線式電動ショベルなど、環境負荷低減に貢献する建設機械の開発、提供に努めてきました。

 昨今、グリーン社会実現に向けて、より低燃費でCO2排出量が少ない建設機械の開発が望まれています。低CO2排出の動力装置として、有線電動、バッテリー、燃料電池式の電動、および従来エンジン式の代替燃料利用の選択肢が考えられますが、いずれも長所、短所があり、現場状況によって利用できる動力装置は変わってきます。当社は、カーボンニュートラル対応で変化していく建設現場や、供給される駆動源、関連する法令やインフラの整備状況を注視しつつ、多様なカーボンニュートラル手段を用いた技術開発を推進し、その成果を生かした建設機械を順次提供していきます。

 まず2025年には、電動化製品のニーズが高い欧州市場に向けに、バッテリー式のミニショベル、小型重機ショベルの上市を、また、日本国内向けにクローラークレーンの有線電動仕様機の上市を計画しています。

 一連のカーボンニュートラルに向けた製品開発の中で、水素を駆動源とした燃料電池式電動ショベルの実用化に向けた取り組みを2021年から進めてきており※2、2023年3月に試作機を完成しました。本試作機は、中型油圧ショベルに電気駆動システムを搭載し、その電力源としてトヨタ自動車株式会社の燃料電池ユニットと水素タンクを採用しています。今回、試作機の評価を通じてショベルで求められる基本動作が水素を駆動源として実現できることを確認しました。

水素を駆動源とした燃料電池式電動ショベル試作機での評価結果

  • 従来のエンジン搭載機と遜色がない動作速度
  • 従来のエンジン搭載機と比べ圧倒的に低騒音
  • エンジン振動がないため、車体への振動伝達が低減し、搭乗時の快適性が向上
  • 稼働による排出物は、水素と空気中の酸素が結合した純水のみ。CO2排出量はゼロ
  • 排気ガスのような高温排気がないため、車体やその周辺への熱害がない

 今後、試作機での検証をもとにさらに改善を進め、連続掘削して土砂の積み込み作業ができるなど、従来のエンジン搭載機と同等の作業性能を実現させ、商品化を目指します。また、水素供給関連技術を有するKOBELCOグループの総合力を活かし、本機の機能向上に加え、安全性と信頼性の確立に向けた研究開発、および水素供給と充填方法などインフラ面での課題解決に取り組み、上市販売に向けた環境構築を加速させていきます。

  • ※1 生産プロセスにおけるCO2削減への取り組みの一つとして、2023年4月には広島事業所へ再生可能エネルギー由来の電力を導入し、2030年を目標としていた削減量(2013年比で45.9%減)を前倒しで達成しました。
  • ※2 水素燃料による燃料電池式電動ショベル試作機開発の成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業の結果、得られたものです。2021年に助成事業として、「燃料電池システムを搭載した油圧ショベルの研究開発と実証実験」が採択されました。

 

燃料電池式電動ショベル(水素を駆動源に稼働している様子)

 

*記載されている情報は発表時のもので、予告なく変更される場合があります。

 

以上