情報化施工を牽引する「ホルナビ」がグレードアップ

熟練オペレータの
ショベルワークを再現する
新たなソリューション

開発ストーリー 04

ホルナビ+PLUS

従来の「ホルナビ」に、アームレバー操作だけで設計面に沿った施工ができる「整地アシスト機能」や、設計面を傷つけることなく施工できる「掘り過ぎ防止機能」を追加。熟練者のノウハウを、誰もがすぐに享受できるマシンコントロールシステム

上村 佑介
GEC開発本部 先行技術開発部
イノベーション推進グループ
国境を越えたコベルコ初の難プロジェクトを牽引
2006年入社。油圧制御やハイブリッド機、情報化施工機の開発を歴任し、本プロジェクトではリーダ役を担う。「今後はほかの測量メーカのシステムへの対応も図ります」

小嶋 裕樹
GECショベル開発部
中型ショベル開発グループ
開発への熱い思いを伝え、技術者魂の共鳴を呼ぶ
2012年入社。本プロジェクトでは広島とニュージーランドで並行して行われた開発の進捗管理などを担当。「いかにオペレータが楽になるかを考えながら開発を進めました」

五頭 直紀
GEC開発本部 要素開発部
電機制御系開発グループ
各方面からの評価結果を操作性に結実
2006年入社。熟練オペレータのノウハウをソフトウェア化することに尽力。「高い技術を電子制御でアシストするための最適解を探ることに苦心しました」

沼沢 大
品質保証部 ショベル開発
試験グループ マネージャー
お客様目線を重要視して製品品質を支える
2008年入社。先行開発時から出荷前まで各プロセスでの品質を評価分析。「市場側からの視点を大切にして、自ら試験機に乗り評価の最前線にも立ちました」

ホルナビ+PLUSの「3Dマシンコントロール」は、バックホウの生産性をさらにアップするシステム

建設現場における人材不足を補うために、国土交通省はICT(情報通信技術)を活用した「情報化施工」の推進を提唱している。これに呼応するかたちでコベルコは2015年、測量位置情報をもとにディスプレー表示とアラームで、ショベルの掘削作業をナビゲートするマシンガイダンスシステムである「ホルナビ」を世に送り出した。

そして今回、3次元(3D)マシンコントロール「ホルナビ+PLUS」を発表。これは、アームレバーによる操作のみで、高い熟練度を要するショベルの複合的な動きを正確に再現するシステムだ。設計面に沿って正確な施工ができるため、初心者でもベテラン並みの生産性と仕上がり精度を実現。現場に大きな福音をもたらすものとして、注目を浴びている。

少人数で大きな仕事を高精度で実現するために

そもそも「情報化施工」の考え方は、高齢化が進む熟練者の技術を継承しながら、少人数で従来以上の効率と精度で仕事をこなそうというものだ。例えば法面の整形など、ショベルを使ってスムーズな面を築くには、高いスキルが必要で、厳しい精度が現場では求められる。今回のプロジェクトを牽引した上村佑介はこう語る。

上村

高度な熟練技術を必要とする「ブーム」「アーム」「バケット」が連動した複合動作を、レバー操作だけで実現しようというのが「ホルナビ+PLUS」の基本思想です。つまり、熟練者の匠の技をマシンのアシストによる容易な操作で再現しようということです

そこでコベルコは、世界有数の測量機器メーカであるトリンブル社と協働。相互に強みを持ち寄り、この思想の実現を目指した。

具体的な開発は16年8月にスタート。トリンブル社の開発部隊とのスクラムのもと、広島とニュージーランドで同時に進行した。両社のエキスパート同士の固い連携により、翌17年3月にはニュージーランドで実機検証を実施。5月には量産のための部品手配を開始するというハードなスケジュールを、見事にクリアしていった。

人手不足に悩む欧州で作業効率向上の切り札として広く普及しているチルトローテータ

エンジニア同士の国際間連携が実を結ぶ

上村とともにニュージーランドへと出向いてプロジェクトを進めた小嶋裕樹は、「エンジニアとしての熱意が、文化や言語の壁を越えた」と語る。

小嶋

実機の改造工程では、言葉では伝えにくいニュアンスなども、私たちが配線や配管の工事を実演して伝えることで理解を深めていきました。「優れた製品を生み出そう」という技術者魂が相互に共鳴し合った実感がありました

また品質保証部の沼沢大は、現場ノウハウの再現を追求するために、ユーザ目線によるチェックを重ねた点も、「ホルナビ+PLUS」の精度アップを加速させたと強調する。

沼沢

私たちは、20年以上の現場経験を持つ熟練オペレータに試乗してもらい、その感想を開発に反映しています。というのも、構造や剛性、機構といったメーカ側の視点とともに、使い勝手や実戦的なスペック要件など、市場側からの視点も重要視しているからです

そのなかで、レバー操作と実際の動作までのレスポンスや、各部が動く速度などの最適値を探っていった。例えば、単純な動作速度だけなら、いくらでも機械的に速くできる。しかし、実際の作業中に最も作業効率が上がる速度は、施工現場を熟知したオペレータにしか分からない。そこでさらに、全国のさまざまな現場で活躍するお客様にもモニタ評価を依頼した。

上村

ICT建機の活用経験がある方はもちろん、活用経験がないお客様、また豊富な経験を持つベテランから新人オペレータの方まで、可能な限り広範な方々に乗っていただき、公正な意見の収集に努めました

アームレバー操作だけで、設計面に沿った施工が実現。
習得までに多くの経験を要する「ブーム」「アーム」「バケット」の複合操作を半自動化することで、
誰でも熟練オペレータ並みの生産性と精度を実現する

お客様と製造部門の声に寄り添う開発姿勢を堅持

試乗後のアンケートでは、「作業スピードに驚いた」「思った通りの動きが実現する」などの高評価も多く、「新人の即戦力化はもとより、ベテランが乗ることでさらに機能が発揮でき、現下の仕事の生産性が向上する」といった意見も寄せられた。

電子制御の専門家として本プロジェクトに参加した五頭直紀は、トリンブル社やコベルコ建機社内、オペレータからの要望を取りまとめ、具体的な機能を具現化させることに注力した。

五頭

例えば、操作レバーを入れてから作動するまでのレスポンス感や各動作の速度など、熟練オペレータが実際に操作した際のデータを分析し、それらを誰もがマシン上で再現できるシステムをソフトウェアで実現しました

今回のプロジェクトでは、試作機ができる以前の構想段階から、製造部門の人材もプロジェクトに参加している。開発の上流工程から工場サイドの意見を反映することで、下流工程における無用な手戻りを廃するためだ。その結果、量産体制の確立の早期化を実現している。

太平洋をまたぎ、開発主導者以外の知見を取り入れながら完成した「ホルナビ+PLUS」は、現場が抱える人材確保や技術の継承問題への新たなソリューションとして、大きく貢献できるはずだ。

Pick up:ICT施工が現場を変える。はじめるなら、ホルナビ / ホルナビ+PLUS

※掲載内容は発行当時(2018年1月)の情報です。